粂吉くめきち)” の例文
粂吉くめきちさん、飛んだ目に会いなすったね。まあ、髪でもなでて……おう肩にも泥がついている……ついでに帯でもお直しなさい」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出しましたよ。川甚の小さい船で、乘込んだのは、主人の五郎次郎とお孃さんの玉枝さん、それに下女のお鶴に、あのヘラヘラ野郎の手代粂吉くめきち
飯を喰った万平が、表二階の若衆部屋へ上って行くと、皆どこかへ遊びに行ってガランとした部屋の隅に、早くも床を取って寝ていた朋輩の粂吉くめきちが、頭を持ち上げてソウ云った。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二、三軒、久蔵は昔の仲間浜町の粂吉くめきちのところへ、万吉は卜者うらないへ、久三郎は明神下の浪人者井田平十郎のところへ——
粂吉くめきちをここへ呼べと、馬春堂か何かしきりと女中にクダを巻き初めたので、伊兵衛は外聞をはばかりながら
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二、三軒、久藏は昔の仲間濱町の粂吉くめきちのところへ、萬吉は卜者うらなひへ、久三郎は明神下の浪人者井田平十郎のところへ——
ここ大入りつづきで、ほくほくものの太夫元は、この興行に見込みがあると見て、旅先から手踊りの女芸人を数名買い込んで来て、粂吉くめきちの前座に景気をつけている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よく見ました。私と粂吉くめきちさんと二人で、提灯をつけて、庭の植込みから縁の下まで」
病人のそばで、密々ひそひそ、話し込んでいた女衒ぜげん粂吉くめきちが、耳を抑えて、飛び上がった。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この狂躁曲の演出者は、野幇間のだいこの善吉で、藝者の粂吉くめきちとお吉がその助手。それに女小間物屋のおけさ、その娘のお六、指物職人の勘太、その妹分のお榮など、いづれも申分のない藝達者でした。
後ろから毒を言ふのは、ヘラヘラの粂吉くめきちでした。