簑笠みのがさ)” の例文
思いがけない来客は、立てつけの雨戸をはずしてみると、簑笠みのがさをつけて、提灯ちょうちんをその簑の中へ包んでいたのが、静かにその光を庵の中へ向けて
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
簑笠みのがさをつけた本陣に船頭をたのんでひどい吹きぶりのなかを島へわたった。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
正面は粗末なる板戸の出入口。しものかたには土竈どがま、バケツ、焚物たきもの用の枯枝などあり。その上の棚には膳、わん、皿、小鉢、茶を入れたる罐、土瓶どびん、茶碗などが載せてあり。ほかに簑笠みのがさなども掛けてあり。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
最初の簑笠みのがさが、ここで、頼みたいこと、頼みたいことと繰返した内容を明らかにしはじめました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それが簑笠みのがさこそつけない、竹槍こそ持たないが、いずれも大げさにいえば一道の殺気粛々として、そうしてあそこへ集まってからに、大陽気に歌い出すものなんぞは一人もないのです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その二人の者こそは、必ずや、昨夜ふいにおとずれた簑笠みのがさのものであるが、果してどんなかおが来たのかと、明るい光ではじめてうかがって見ると、この二人も、別に珍しい面ではありませんでした。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)