福渡ふくわたり)” の例文
「三十日。晴。朝飯より人車三乗に而出立。亀の甲より歩行。又弓削ゆげより人車。福渡ふくわたりより駕一挺。夕七時前あひ宿しゆく久保に而藤原沢次郎へ著。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ただ谷が莫迦ばかに深かいのと巌壁がんぺき開鑿かいさくして造った桟道とは流石さすがに宏壮、雄大の景だと思われた。大網おおあみを過ぐればやがて福渡ふくわたり。この辺の景色は絶景といっても差支えあるまい。
当主の曾祖父を福渡藤兵衛といい、明治の初めに苗字を「松岡」とつけず「福渡ふくわたり」とつけた。辻川から二里位川上に、福ノ泉という部落があり、そこの伊藤家というわけであった。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)