石甃いしだゝみ)” の例文
しん/\と生ひ茂つた杉木立に圍まれて、苔蒸こけむせる石甃いしだゝみの兩側秋草の生ひ亂れた社前數十歩の庭には、ホカ/\と心地よい秋の日影が落ちて居た。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
血のついた腥くさい石甃いしだゝみの上で、旅興行の手品師が囃子おもしろく、咽喉を真赤に開けては、激しい夕焼の中で、よく大きな雁首の煙管を管いつぱいに呑んで見せたものである。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
遠くで鷄の聲の聞えた許り、神寂びた宮居は寂然ひつそりとして居る。周匝あたりにひゞく駒下駄の音を石甃いしだゝみに刻み乍ら、拜殿の前近く進んで、自分は圖らずも懷かしい舊知己の立つて居るのに氣付いた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)