矢作やはぎ)” の例文
こう二人は、先に高氏の秘命をおびて、矢作やはぎから鏡へ先発していたものである。そして、ここの歌野寺のうちで、宮方の密使と出会い
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本一の長い橋と称せられた二百八間の矢作やはぎの橋を渡って、矢作から西矢作の松原へかかった時分に、不意に、お角の駕籠かごの棒鼻がおさえられてしまいました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
特に岡山以北の土地は矢作やはぎ川大平川の下流が逆流することになるので隣接領の大名から再三中止の申入れがあったにもかかわらず、一度決潰けっかいしたら二度と再築しないという約束で
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
「……のう。ご縁なあって、矢作やはぎの陣からずっとお世話申してきた師直だ。これからも変らずにきっと蔭でのお力にはなり申そう」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あわせて、三千一百騎を、すべてここの矢作やはぎにあつめ、馬かず兵糧も充分にそろえて、今日をお待ち申しておりました」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かねがね、海道の宿駅に撒いておいた諜者から、矢作やはぎにおける使者鏖殺おうさつの件を、云々しかじかと、早馬で知らせてきたのである。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし尾張守高家が上洛途上で、矢作やはぎの事件からすべてを看破かんぱしているとしたら? ——兄高氏は六波羅の内で手もなく逮捕されてしまうにちがいない。そう案じられたのだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)