瞞著まんちゃく)” の例文
一は自家の本尊を奥ゆかしがらせて俗人を瞞著まんちゃくせんとするに外ならざれども、一は彼がこの句の歴史的関係を知らざるに因らずんばあらず。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
靴を後前あとさきを逆にしてはこうかとも思ったが、しかし同一方向に三つの足跡があると云うことになると、それはもう一目瞭然に、瞞著まんちゃくであると云うことが看破されてしもう。
そして電気殺人たることは判っているのにもかかわらず、それを瞞著まんちゃくしようとてか短刀を乳房の下に刺しとおしてあるではないか。係官は犯人の嘲弄ちょうろう悲憤ひふんなみだをのんだ。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
菜穂子は自分のそう云う一種の瞞著まんちゃくを、それから二三日してから、はじめて自分に白状した。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
事実は寵愛ちょうあいの侍女の費消したものであり、またその侍女はいろいろの点で光泉院様を、……なんと申したらよいか、その、……俗にいうところの、つまり瞞著まんちゃくしておったというわけで
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ほんとうに人間の習慣には何か瞞著まんちゃくさせるものがある。……
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)