瘤寺こぶでら)” の例文
わたくしはラフカヂオ・ハーンが『怪談』の中に、赤坂紀の国坂の暗夜のさま、また市ヶ谷瘤寺こぶでらの墓場に藪蚊やぶかの多かった事を記した短篇のあることを忘れない。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そうしたヘルンの小泉八雲が、常に最も好んだ散歩区域は、寺院の閑静な境内けいだいだった。特に東京の富久町とみひさちょうに居た時には、近所の瘤寺こぶでらへ毎日のように出かけて行った。
俗に瘤寺こぶでらといった。四谷自証院の裏手、横地半九郎方の奥ざしきだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いで行ってしまわれた夕暮、我れは悲しみにたえやらず、君の行方なつかしく、美しい茜色の西の大空を、野越え、山越え、森越えて眺めやり、松樹しょうじゅ影暗く繁る、瘤寺こぶでらの、湿しめれる墓畔ぼはんに香をいて