痕跡あとかた)” の例文
痕跡あとかたも残さずに拭い上げた口の中の黒血の残りが、斬られて投棄てられる拍子に、仏様の咽喉からセグリ上げて来ようなぞとは閻魔様でも気が付かん事じゃろう。
住むべき家の痕跡あとかたも無く焼失せたりとふだに、見果てぬ夢の如し、ましてあはせて頼めしあるじ夫婦をうしなへるをや、音容おんようまぼろしを去らずして、ほとほと幽明のさかひを弁ぜず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)