甲冑かつちう)” の例文
この銅像は甲冑かつちうを着、忠義の心そのもののやうに高だかと馬の上にまたがつてゐた。しかし彼の敵だつたのは、——
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今しも石垣いしがきの岸から二人の潜水夫が異様な甲冑かつちうを頭にすつぽり冠つて、だぶ/\の潜水服を着て、便器のやうな形の大きい靴をきながら船渠の底へもぐらうとしてゐる所だつた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
将門の軍は二度の戦に甲冑かつちうれ、兵具ひやうぐも十二分ならず、人数も薄く寒げに見えた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
又行方知ラズトモ聞ヘケレバ、後見ノ男ヲ呼デ曰ク、武士ノ家ニ生レテハ十歳ニモ成ヌレバ甲冑かつちうヲ帯シ、軍陣ヘ出デ、討死スルコソ面目トハ承レ、言フニ甲斐ナク我ヲ残シ置給フ事恨ミテモ由ゾナキ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)