産褥熱さんじょくねつ)” の例文
私の六つの時の母の大病は、弟を出産した彼の産褥熱さんじょくねつであった。以来、弟は本家の祖母の許で育てられていたからでもあるが。
澪標 (新字新仮名) / 外村繁(著)
熱さえ出ればすぐ産褥熱さんじょくねつじゃなかろうかという危惧きぐの念を起した。母から掛り付けて来た産婆に信頼している細君の方がかえって平気であった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母は産褥熱さんじょくねつの手当てがゆき届かなかったために死に、父は彼と同じく枝切り職であったが木から落ちて死んだ。
獣医はどうも産褥熱さんじょくねつらしいと言う。よく命にかかわることもある病気で、それも特にいい乳牛に多い。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
織田家は北境の守りにしばらく安堵あんどを保った。けれど、その嫁君は、信勝を生むと産褥熱さんじょくねつで死んだ。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに丁度今から二十年ぜんの事……品夫の母親が、品夫を生み落したまま産褥熱さんじょくねつで死ぬと間もなく、甥の当九郎が又、何の理由も無しに、叔父の源次郎氏と私の養父ちちへ宛てて
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
少し血脚気ちがっけの気味もあるようだし、産褥熱さんじょくねつの出たのも気にくわぬが、これでどうかこうか余病さえき起さなければ、大して心配することもなさそうだと言って局部へ手当てを施し
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)