瓦礫ぐわれき)” の例文
冬枯れのびついた田畑や煙突だけになつた、瓦礫ぐわれきの工場地帯や、山や川や海が、轟々ぐわうぐわうと汽車の車輪に刻まれて後へ走り去つて行く。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
一五家に久しきをのこ一六黄金わうごん一枚かくし持ちたるものあるを聞きつけて、ちかく召していふ。一七崑山こんざんたまもみだれたる世には瓦礫ぐわれきにひとし。
詩神は瓦礫ぐわれきの中に立ちて泣くほどに、人ありて美しき石像を土中より掘り出せり。こは古の巨匠の作れるところにして、大理石の衣を着けて眠りたる女神なり。
頑石笑つて且歌ひ、枯草花さいて、しかもかをる、獅子は美人が膝下に馴れ大蛇は小児の坐前に戯る、朔風暖かにして絳雪かうせつ香しく、瓦礫ぐわれき光輝を放つて盲井醇醴まうせいじゆんれいを噴き
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
胸の中では、無数の瓦礫ぐわれきがつまつたやうに、索寞として音を立てて、あちらへ傾いたりこちらへ転がつたりする。次の仕事にかかるには、あまりすべてが雑然としすぎてゐる。
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
荒凉とした焼跡の瓦礫ぐわれきには、汚ない子供達がかたまつて煙草を吸つてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)