獅噛しかみ)” の例文
そこは主膳が今まで飲んでいたところらしく、獅噛しかみのついた大火鉢の火がおこっているし、猩々足しょうじょうあしの台の物も置かれてあります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はッはッはッ、慌てました、いや、大狼狽だいろうばい。またしても獅噛しかみったて。すべて、この心得じゃに因って、鬼の面をかぶります。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると、めくら縞の羽織を着たその男は、わがことのような心得顔で獅噛しかみ火鉢の煉炭火から煙草を吸いつけながら
その年 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
まちなし黒木綿の腰袴こしばかまで、かしこまった膝に、両のかいなの毛だらけなのを、ぬい、と突いた、いやしからざる先達が総髪そうがみの人品は、山一つあなたへ獅噛しかみを被って参りしには、ちと分別が見え過ぎる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)