あわ)” の例文
師匠すじの、先輩たちは、絶えず、あわてふためくな、しずかに、しっかりと進んでゆけと、忠告するのだが、闇太郎だけは、そうはいわなかった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いくらかあわて気味ながら、この重役の策略のない頑固さに信頼していた。深く考えなかったのだ。深く考えずに済む時代に生きて来ていたのだ。云わば、心にうつる快不快を善悪として処断していた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「伜、まだ、あわてるには及ばぬぞ——老中、若年寄、わしと、親類同然にまじわったこともある人々じゃ——何とか、手立てが残っておらぬでもあるまい」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
手洗場しもばのお窓から、ふと眺めますと、黒い影が見えましたので、みなさまに、先きにお知らせせずに、飛び出しましたものゆえ、むこうもあわてて、逃げ去りました。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)