独木橋まるきばし)” の例文
旧字:獨木橋
これを例するにあたかも独木橋まるきばしをば両岸より渡るがごとく、たがいに相接近するに従い、その勢いいよいよ両立するあたわず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
お高はいつまでもそこにいたかったが、その寂然じゃくねんとしているのがかえって恐ろしくなって、いそいで、そこにかけてある独木橋まるきばしを渡りかけた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「あ、そうだ。きっとそうよ。こないだあそこの独木橋まるきばしを、調子をつけてひょいひょいと渡ったわよ」
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
趙七爺はそんなものには目も呉れず人中を通り過ぎて、たちまち烏臼木の蔭に入り、「お前は抵抗することが出来るか」といいながら独木橋まるきばしの上へ出て悠々と立去った。
風波 (新字新仮名) / 魯迅(著)
ここに音するものとてはただ一条の水夜とも知らで流るるあるのみ、それすら世界の休息を歌うもののごとく、スヤスヤと眠りを誘いぬ、そのやや上流に架けたる独木橋まるきばしのあたり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
其の血が百姓の顔へ掛りますから、百姓は自分が打たれた心持がして、人殺し/\/\と慄えながら云っている所へ、鹽原角右衞門が独木橋まるきばしを渡ってトッ/\/\と駈けて来ました。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
むかしは独木橋まるきばしなりしといえばその怖ろしさいうばかりなかりしならん。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼れただ小心翼々たり、その世に処する、あたかも独木橋まるきばしを渡るが如し。彼は左にも右にも行くべき道を見ず、故に思い切りて独木橋を鉛直線に進前す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼はお納戸色のリンネルの長衫ながぎて、ちょうど今独木橋まるきばしの上を歩いて来るのであった。
風波 (新字新仮名) / 魯迅(著)
しかれどもさらに一層を突進して論ずれば、その非常の事たりしがためのみ。彼は非常を愛して、凡俗の行をなすを厭う。もし衆人みな独木橋まるきばしを渡らば、彼いずくんぞ喜んで渡らん。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)