爪彈つまび)” の例文
新字:爪弾
夏場のことで、表通りの店はまだ開いて居りますが、蚊遣煙かやりが淡くこめて、何處からともなく爪彈つまびきの音も聽えて來る戌刻半いつゝはん(九時)過ぎ、江戸の夜の情緒は、山の手ながら妙になまめきます。
これだけ藝達者が揃ふと、小唄や爪彈つまびきや、ほろ醉ひや膝枕ひざまくらの情緒を樂しむ、しんねこ趣味の船はむしろ邪魔つ氣で、白髯まで伸して、川幅一パイに騷ぐのもまた一つの馬鹿々々しい境地だつたのです。