火打石ひうちいし)” の例文
だれかが、カチカチ……と火打石ひうちいしっている。部下は二十人ばかり、ここへ置いていったのに、イヤにあたりが静かである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ええ、じゃあ言いますよ。マッチ、ライター、ええと、それから火打石ひうちいし——」
智恵の一太郎 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仙果は人気ひとけのない水茶屋の床几しょうぎに置き捨ててある煙草盆たばこぼんから勝手に煙草の火をつけようとして、灰ばかりなのにちょッと舌鼓を打ったが、そのまま腰をおろ懐中ふところから火打石ひうちいし捜出さがしだしながら
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
クロは自由のになっても、竹童のそばを離れることなく、流れる水をすっていると、かれはまた火打石ひうちいしを取りだして、そこらの枯葉かれはに火をうつし、煙の立ちのぼる夕空をあおぎながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)