濠洲ごうしゅう)” の例文
それから何年か立って、その恋人が濠洲ごうしゅうにいてる云うことが分ったのんで、あの人、濠洲まで訪ねて行きやはりましてん。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
サモアから濠洲ごうしゅうへ、濠洲から独領西南アフリカヘ、アフリカから独逸本国へ、独逸から又ミクロネシアヘと、盥廻たらいまわしに監禁護送されて来たのである。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
東のものが西へ移り、南のものが北で暮らし、この種類の女は遠く新嘉坡シンガポール濠洲ごうしゅうあたりまでも、風に飛ぶ草の実のように、生活を求めて気軽に進出するのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
醤は、このからからんという音を聞くたびに、寒山寺かんざんじのさわやかなる秋の夕暮を想い出すそうである。——なにしろ、ここは、人跡じんせきまれなる濠洲ごうしゅうの砂漠の真只中まっただなかである。
日本を中心として、右には米大陸の西岸が見え、上には北氷洋が、西には印度インドの全体が、そして下には遥かに濠洲ごうしゅうが見えている。その地図の上には、ところどころに太い青線で妙なしるしがついていた。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
濠洲ごうしゅう行以来の私とファニイとの病気もようやく治った。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)