湯泉)” の例文
「僕が待ち伏せをしていたとでも思ってるんですか、冗談じょうだんじゃない。いくら僕の鼻が万能まんのうだって、あなたの湯泉に入る時間まで分りゃしませんよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
手拭てぬぐいを下げて風呂に行く。一町ばかり原の中を歩かなければならない。四方を石で畳上たたみあげた中へ段々を三つほどゆかから下へ降りると湯泉に足が届く。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世の中もこんな気になればらくなものだ。分別ふんべつ錠前じょうまえけて、執着しゅうじゃく栓張しんばりをはずす。どうともせよと、湯泉のなかで、湯泉と同化してしまう。流れるものほど生きるに苦は入らぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
驚いた波が、胸へあたる。ふちを越す湯泉の音がさあさあと鳴る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)