渡良瀬川わたらせがわ)” の例文
渡良瀬川わたらせがわの利根川にがっするあたりは、ひろびろとしてまことに阪東ばんどう太郎の名にそむかぬほど大河たいかのおもむきをなしていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そして、父母のいる屋形の地、一族郎党のむらがり住む足利の町へ、もう一歩で入ろうとする渡良瀬川わたらせがわを眼の前にしたときである。思いがけないものに彼は待たれた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渡良瀬川わたらせがわの水音高く聞えるように成ると、我慢して起きて居たいが飲める口へ少し過したので、ツイとろ/\と茂之助が寝まして、不図ふと眼を覚して見ると、お瀧がへッついの下をき附けて居て
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鳥喰の河岸かしには上州じょうしゅうの本郷に渡る渡良瀬川わたらせがわのわたし場があって、それから大高島まで二里、栗橋に出て行くよりもかえって近いかもしれなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
渡良瀬川わたらせがわの渡し場から中田に来る間の夕暮れの風はヒュウヒュウとはだすように寒く吹いた。灰色の雲は空をおおって、おりおり通る帆の影も暗かった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)