海軟風かいなんぷう)” の例文
それだのに、その新しい・きびしいものへの翹望ぎょうぼうは、いつか快い海軟風かいなんぷうの中へと融け去って、今はただ夢のような安逸と怠惰とだけが、ものうたのしく何の悔も無く、私を取り囲んでいる。
午後の海軟風かいなんぷう(土佐ではマゼという)が衰えてやがて無風状態になると、気温は実際下がり始めていても人の感じる暑さは次第に増して来る。空気がゼラチンか何かのように凝固したという気がする。
夕凪と夕風 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)