洒々しゃしゃ)” の例文
虫籠、絵団扇えうちわ蚊帳かや青簾あおすだれ風鈴ふうりん葭簀よしず、燈籠、盆景ぼんけいのような洒々しゃしゃたる器物や装飾品が何処の国に見られよう。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うまい書は夕顔棚の下で涼しい顔をしておるような、呑気に、洒々しゃしゃとして書いておるようなのがございます。
よい書とうまい書 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
龍眉りゅうび鳳目ほうもく、唇あかく、いかにも洒々しゃしゃたる侠骨の美丈夫。背には一の狩矢、手に籐巻とうまきの弓をかいこんでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あまりの暴言に、夫人は正面からピシャリと叩かれた思いで、しばし呆気に取られて、美和子の顔を、まんじりともせず眺めていたが、その洒々しゃしゃとした容子に、また腹が立って来て
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
七匹生れたことを話して一匹貰ってくれまいかと頼むと、橋口君は、さあ、と首を縦に振りかけたが、奥さんが洒々しゃしゃり出て、犬は嫌いだと言うんだ。猫なら好きですから何匹でも戴きます、だとさ。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
思いきって、こういってのけてみたものの、もし弦之丞が承知したら、なんと間が悪いことだろう、道中も洒々しゃしゃとして歩けはしない、などとお綱は他愛たあいもない取り越し苦労までする。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)