沈丁花ぢんちやうげ)” の例文
それから又座敷からかはやを隠した山茶花さざんくわがある。それの下かげの沈丁花ぢんちやうげがある。鉢をふせたやうな形に造つた霧島躑躅つつじの幾株かがある。
雪はつぼみを持つた沈丁花ぢんちやうげの下に都会の煤煙ばいえんによごれてゐた。それは何か僕の心にいたましさを与へる眺めだつた。僕は巻煙草をふかしながら、いつかペンを動かさずにいろいろのことを考へてゐた。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
梅のかをりを言ふ人が多いが、私は寧ろ沈丁花ぢんちやうげを擧げる。梅のいゝのは一輪二輪づつ枯れた樣な枝の先に見えそめた時がいゝので、眞盛りからせそめたころにかけては誠に興ざめた眺めである。
花二三 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
にほひに洩れて沈丁花ぢんちやうげ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)