沁込しみこ)” の例文
お島は絞ったものを、片端から日当ひあたりのいいところへ持っていってさおにかけたりした。日光がれただれたように目に沁込しみこんで、頭痛がし出して来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
扇を腰に、がたがたと格子を開けると、汚い二階家の、上も下も、がらんとして、ジイと、ただ、招魂社辺の蝉の声が遠く沁込しみこむ、明放しの三間ばかり。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんぼうしても落ちぬほどに、黒々と沁込しみこんだ心のけがれ! (訳注 第三幕第四場逍遥の訳による)
しかし時がたつに従って、その時の事実の真相が少しずつお島の心に沁込しみこむようになって来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)