汐入しおいり)” の例文
玉脇の持地もちじじゃありますが、この松原は、野開のびらきにいたしてござる。中には汐入しおいりの、ちょっと大きな池もあります。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
他生流転たしょうるてんの響きに変りますね、汐入しおいりの浜では、歴劫不思議りゃくごうふしぎが聞え、たえうらでは南無妙法蓮華経が響きます、そのつもりで波の音を聞きわけてごらんなさい……こういわれましたから
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
汐入しおいりから日本橋へゆく道は、新しい市街の幹線道路なので、わりあいに歩きよいが、それでも、石や材木をつんだ牛車がひっきりなしに通るのと、人家の普請ふしんや、埋地うめちの土運びなどで、足もとも悪く
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……なまじっかあしがばらばらだから、直ぐ汐入しおいりの土手が目先にちらついて、気ははやるが、亭主が危い。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……雛に供えたのを放生会ほうじょうえ汐入しおいりの川へ流しに来たので、雛は姉から預かったのを祭っている……先祖の位牌いはいは、妹が一人あって、それが斉眉かしずく、と言ったんだね。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)