殊勝気しゅしょうげ)” の例文
旧字:殊勝氣
然るに、これに対するWの応戦態度はというと、すこぶる落付き払ったものであった。殊勝気しゅしょうげに白い服を着込んで、母校の研究室に居据ってしまった。そうして一切を
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこへ、Tが、昨夜家を明けたのがきまりが悪いという様な、殊勝気しゅしょうげな顔つきで帰って来た。無論服装は、前日家を出た時のとおり換えているし、つけ髭もとってある。
一人二役 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
如何どうしたはずみでか急に殊勝気しゅしょうげを起し、敬礼も成る丈気を附けて丁寧にするようにして、それでも尚お危険を感ずると、運動と称して、教師の私宅へ推懸おしかけて行って、哀れッぽい事を言って来る。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此の度はどうもと殊勝気しゅしょうげに頭を下げたので、私もあわててすわり直したら、その婦人は、物凄く巨大な徳利とっくりをかかえて私達の方ににじり寄って来て、さあひとつ、たんと飲んで下さいませと言った。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
私はその空々しい、殊勝気しゅしょうげな行いを侮蔑の目で眺めた。
鉄の処女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)