死面しにがお)” の例文
あのおばさんの死面しにがおを見る勇気はなく、それに、あんなものは出世前の人は見ないがよいなんて、北原さんあたりも言うたものだから、自分は逃げてしまったが
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さながらに痩せこけた源次の死面しにがおのように、ジッと眼を閉じて、歯を喰い締めたまま永遠に凝固している無念の形相ぎょうそうであった……が……しかしその一文字に結んでいる唇の間から洩れ出す
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お雪ちゃんは必死になって、今、まざまざ見た、棺の蓋の外れのあのイヤなおばさんの死面しにがおのまぼろしをき消そう、掻き消そうとつとめたけれども、これはどうしても消すことができません。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)