柔媚にゅうび)” の例文
その証拠には、さしも柔媚にゅうびにして狡猾な老猫も、少し首を振り出して来たようだ。蘆管の音律につれて、その首が左右に軽くゆれ出して来たようです。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
献身的な妻と、柔媚にゅうびな山々の眺めと、充ち足りた生活に巡査は没入しきっていた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
あらゆる動物のうちに、猫だけがいけない。あいつに表情がない、愛嬌あいきょうが無い、おだてがかない、感激が無い——芸術がまるっきりわからない。猜疑さいぎのくせに柔媚にゅうびがある。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)