果敢無はかな)” の例文
それだけに経験に於てすら何か人生全般にわたって頼むべからざる果敢無はかなさを感得したほどの繊鋭なカンを持ち、しかも
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そのは仲の町のある家の抱えであったが、さっぱりお座敷がなくて姐さんや朋輩からも冷遇されていたが、ついにわが身を果敢無はかなんで死をえらんだ。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
近代の象徴詩などというといえども、かくの如くに自然に行かぬものが多い。「細砂まなごにも」をば、細砂まなごにも自分の命を托して果敢無はかなくも生きていると解するともっと近代的になる。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
……さういふ果敢無はかなさが慌ただしい色情の裏側に、むしろうら悲しくやるせない刻印を押してゐるやうに思はれて、物の哀れとも言ふべきものが、侘しく胸に泌みて来るばかりであつた。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
人の世の果敢無はかなさ、久遠くおん涅槃ねはん、その架け橋に、わたしは奇しくもいこい度い……さあ、もう何も言わないでね。だいぶ暗くなったから、燈でもつけて、それからおときでもお隣の聖におあげなさい
或る秋の紫式部 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)