松金油まつかねあぶら)” の例文
そして、繻子鬢しゅすびんのくずれを手早くき返し、美艶香びえんこう松金油まつかねあぶらきはじめたのは、もう恋のほかなにものもなく、一途いちずに大津とやらへ行って、法月弦之丞に会うつもりであろう。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふさふさとした黒髪を幾たびもいて、女用の松金油まつかねあぶらは、やや香りが高すぎるが、それを塗って、形よく銀杏いちょうに折り曲げ、キリキリッと元結を巻いて、根締めのつばめてつける。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸の女は、うえかたで、伽羅油きゃらゆ、町方では井筒いづつ松金油まつかねあぶらと限っている
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)