かげ)” の例文
何かしら薄ら寒いが、いいなぎである。明るいようでもかげりやすい日射し、照ってもまた光り耀かぬ黒い波濤の連続、見れば見るほど大きな深いうねりである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
もう日もかげつた山蔭の溪ばたの風を恐れながらも着物を脱いで石の上に置き、ひつそりと清らかなその湯の中へうち浸つた。一寸立つて手を延ばせば溪の瀬に指が屆くのである。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
もう日もかげった山蔭の渓ばたの風を恐れながらも着物を脱いで石の上に置き、ひっそりと清らかなその湯の中へうち浸った。一寸立って手を延ばせば渓の瀬に指が届くのである。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
すでにかげりそめたる夕日は彼の男の描けるサンシユユの黄なる枝の花に、そを見る歯痛の人の顔一面に巻きつけたる白き繃帯に、わがむく蜜柑の皮の黄橙色オレンヂいろにさみしく光りつつあり。
春の暗示 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そうして休憩所の前に著いた頃には、もうそろそろ日の光も黄色くかげり初めていた。風も出て来た。こうして敷香の夏の一日も、雲がまた薄く低迷して、うそ寒く、寒く暮れてしまうのである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
湿りたる土ののさみしさにかげりつつうちしをる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かげりゆく日のあゆみたまゆらにあかると見つつ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
過ぎし日のやるせなき思ひ出はまたかげりゆく。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
大きく大きくうねつてゐるのだ、かげつて。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)