春陽はるび)” の例文
春陽はるびがうららかに射してはいたけれど、まだ大気が冷くて木の芽もふくらんでいなかった。
或る素描 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それは何の狐疑心こぎしんでもなく裏の様子を見るための摺足すりあしでありましたが、そこまで行かぬ櫺子れんじの窓下へ来かかると、二寸ほど開いている小障子の間から、春陽はるびれる煎薬せんやくのにおいが
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぬばたまの黒豹の毛もつや/\と春陽はるびしみみに照りてゐにけり
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
我が塑像ふくらみ黒きまぶた夕柔ゆふやはらなる春陽はるびかぎろふ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)