明澄めいちょう)” の例文
曹操の頭脳は明澄めいちょうである。彼の血は熱しやすく、時に、またにごりもするが、人の善言をよくうけ入れる本質を持っている。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お雪は思いがけないほど、明澄めいちょうな天地に包まれて、昨日きのうまで、暗い、小雨がちな巴里パリにいた自分と、違った自分を見出みいだして、きつねにつままれたような気がした。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかしそれを切りぬけて出た作者は、その卒直な態度のゆえに、また物を言い切る明快さのゆえに、物の形のくっきりとした、明澄めいちょうな世界を作り出すことができるであろう。
藤村の個性 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
……ふと、ここに坐って、沁々しみじみ感じることは、心身二つにして一つのものを、常に明澄めいちょうな一体として生き持つことの難しさだな。いやもう、合戦とはせわしないもの、また人間を粗雑にもする。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)