“昇降機（リフト）” の例文
軈（やが）て旅館へ着いた。彼女は自動車を下りて賃金を払うと、電話で教えられた通り、入口の左側にある昇降機（リフト）室へ入った。
Ｐ丘の殺人事件 (新字新仮名) ／ 松本泰(著)
あらゆる地下電車ステーションの昇降機（リフト）とエスカレータアは黒い人間の粒々を密集させて廻転する巨大な産卵紙となる。
ロンドン一九二九年 (新字新仮名) ／ 宮本百合子(著)
三十分ばかりたった後、僕は或ビルディングへはいり、昇降機（リフト）に乗って三階へのぼった。それから或レストオランの硝子戸を押してはいろうとした。が、硝子戸は動かなかった。
歯車 (新字新仮名) ／ 芥川竜之介(著)
私は、はじめ昇降機（リフト）の速力などといふものは登載物の有無に関はりはないものかと思つてゐたのであるが、詳さに験べて見ると、その軽重に依つて微妙な変化のあることを見出した。
日本橋 (新字旧仮名) ／ 牧野信一(著)
この時百貨店スワンの五階で、マニキン学校卒業の一人の美しいマニキンが着換のため急いで昇降機（リフト）へ入ろうとした。
ロンドン一九二九年 (新字新仮名) ／ 宮本百合子(著)
三十分ばかりたつた後、僕は或ビルデイングへはひり、昇降機（リフト）に乗つて三階へのぼつた。それから或レストオランの硝子戸を押してはひらうとした。が、硝子戸は動かなかつた。
歯車 (新字旧仮名) ／ 芥川竜之介(著)
「騙（かた）りだ。」居合せた男達は口々に叫んで、昇降機（リフト）に向おうとする刹那、倏忽（たちまち）戸外（そと）に凄じい騒ぎが起った。それは年若い婦人が五階の窓から敷石の上へ墜落（お）ちて惨死したという報知（しらせ）であった。
緑衣の女 (新字新仮名) ／ 松本泰(著)