斬奸ざんかん)” の例文
金兵衛らの行為は、藩家のおためをおもう「斬奸ざんかん」であって、いささかの私心もないし、これを詳しく糾明すれば、どこまで累が及ぶかもわからない。
本文にわたくしは上田立夫と四郎左衛門とが故郷を出でゝ京都に入る時、早く斬奸ざんかんはかりごとを定めてゐたと書いた。しかしこれは必ずしもさうではなかつたであらう。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
国威の拡張をさそふる事、決して浅少にあらざるをや、速やかに眼前に横たはるの蠧賊とぞくを除き、士風の萎靡を振ひ、社会の昏夢を警醒せんと欲し、斬奸ざんかんの策を決行す。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
この変事は人の口から口へと潜むように伝わって来た。刺客はいずれも斬奸ざんかん主意書というをふところにしていたという。それには大老を殺害すべき理由を弁明してあったという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「国賊安藤対馬、斬奸ざんかんじゃっ。覚悟せい!」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
四郎左衛門は土屋信雄と変名して、京都粟田あはた白川橋南に入る堤町の三宅典膳と云ふものゝ家に潜伏してゐた。そして時々七人の同志と会合して、所謂斬奸ざんかん手筈てはずを相談した。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
刺客はいずれも斬奸ざんかん趣意書なるものをふところにしていたという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)