しり)” の例文
宗教及び道徳は彼のシバルリイに欠くべからざる要素なりしに、我が平民のシバルリイは寧ろ当時の道徳組織をしりぞけ、宗教にはちなみ薄きものにてありし。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
昔し彼が政府の内意で或官職をなげうった時、当路の人は山陰道筋のある地方の知事なら転任させてもいという条件を付けた事があった。しかし彼は断然それをしりぞけた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その上津田のこの判断を確めるに足る事実があとからいで起った。原はそれほど欲しそうな紙幣さつへ手を出さなかった。と云って断然小林の親切をしりぞける勇気も示さなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)