故家いえ)” の例文
何、僕の故家いえかね、君、軽蔑けいべつしては困るよ。僕はこれでも江戸っ子だよ。しかしだいぶ江戸っ子でも幅のきかない山の手だ、牛込の馬場下で生まれたのだ。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこから坂のほうへ二三軒行くと古道具屋がある。そのたしか隣の裏をずっとはいると、玄関構えの朽ちつくした僕の故家いえがあった。もう今は無くなったかもしれぬ。僕の家は武田信玄の苗裔いえすじだぜ。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
落語家はなしかで思い出したが、僕の故家いえからもう少し穴八幡のほうへ行くと、右側に松本順という人のやしきがあった。あの人は僕の子供の時分には時の軍医総監ではぶりがきいてなかなかいばったものだった。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)