手繰たく)” の例文
『来たよ。』と叫びながら、両手にて手繰たくり始むれば、船頭直ちに、他の一仕掛を挙げ尽し、鈴をも併せ去りて、搦まるを予防しつつ
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
私にもその御煎餅おせんべをちょうだいなと云うや否や、そいつの食い欠いた残りの半分を手繰たくって口へ入れたという時なんです
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もしか三度目に不通にでもなつたら、今度は隣席となりにゐる男の頭から新しい帽子でも手繰たくつて手向けようと思つてゐる。
(馬の沓を手繰たくり弥八を打つ)
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
そのどさくさ紛れに、普魯西プロシヤのフレデリツク大王は、シレージヤの土地を、墺太利オーストリーの女帝マリア・テレサの柔かい手から手繰たくつた事があつた。
そうして突然いきなり「やろう」というや否や、自分の手から、碁石をぎ取るように手繰たくりました。私は何の気もつかずに、「よろしい」と答えて、すぐ打ち始めました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
友達は眼の色を変へて、その瓶を手繰たくつた。そして一字づつ克明に壜の文字を読んでゐたが暫くすると