手廻てまわ)” の例文
つまり「近代文学」の連中はあの頃から生き残る計画をたて今日を考えておったので、手廻てまわしだけは相当なものであるが、現実の生活力が不足で、却々なかなか予定通りに行かない。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
手々に手廻てまわりのものや、ランプを持って、新宿まで電車、それから初めて調布行きの馬車に乗って、甲州街道を一時間余ガタくり、馭者ぎょしゃに教えてもらって、上高井戸かみたかいど山谷さんやで下りた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
陸の踊に使う衣裳いしょう小道具は、渋江の家では十二分に取りそろえてあったので、陸と共に踊る子が手廻てまわり兼ねる家の子であると、渋江氏の方でその相手の子の支度をもして遣って踊らせた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
鳩首きゅうしゅして眼を光らせてうなずき合い、四方に手廻てまわしして同じ讃岐の国の大地主の長女、ことし十六のお人形のように美しい花嫁をもらってやったが、才兵衛は祝言しゅうげんの日にも角力の乱れ髪のままで
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)