懊悩あうなう)” の例文
旧字:懊惱
丑松が胸の中に戦ふ懊悩あうなうを感ずれば感ずる程、余計に他界そとの自然は活々いき/\として、身にみるやうに思はるゝ。南の空には星一つあらはれた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
謝せよ、新夫婦に感謝せよ、渠等は社会に対する義務のために懊悩あうなう不快なるあまたの繋累けいるゐに束縛されむとす。
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして彼は悶え、一刻前の凡ての輝ける希望と、喜びとは忽ち底知れぬ絶望と懊悩あうなうとに変つた。
して居るんだ。僕もやつた。しかもツイ近頃の事よ。そして別れた、同じく事情ありさ。見たらう君、新聞に出て居た、湯村は某女学生に恋して、懊悩あうなう煩悶はんもんの極、小説が書けないんだつて、あれさ。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
独り精神こゝろ苦闘たゝかひを続けたのは丑松で、蓮太郎が残して行つた新しい刺激は書いたものを読むにもまさ懊悩あうなうを与へたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)