愁歎しゅうたん)” の例文
秀調の戸浪、団十郎の源蔵と相ちて始終寸分のすきなく、まま微に入る妙あり。福助の千代、品格ありて愁歎しゅうたんも騒しからず。菊五郎の松王とは一対の好夫婦なりき。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
何でも二歳ふたつ三歳みっつの子供がありましたがその可愛盛りの愛児がこの間死んだので、私の妻はほとんど狂気のごとくに歎き私も漁に出掛けても少しも面白くないという愁歎しゅうたん話。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ふと愛した近隣のこどもに死なれ愁歎しゅうたんの世にもあわれなありさまを述べたものなどであつた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
世にいじらしい物はいくらもあるが、愁歎しゅうたんの玉子ほどいじらしい物はない。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
松王のことばの中に刀を納め、襷をとり、肌を入れ、松王が投げ出しし大小を揃へて返す。愁歎しゅうたんの中はじつとうつむき聞き居り「につこりと笑うて」の白は云ひ悪さうにいふ。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)