悸然ぎよつ)” の例文
さうして見よ、背後うしろから尾をあげを高めた黒猫がただぢつときんの眼を光らしてゐたではないか。私は悸然ぎよつとして泣いた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
私は悸然ぎよつとして、慌てて雑誌を机の下へ投げ込んで弾機ばねの様に立ち上つた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
私は悸然ぎよつとした。声がしたのである。確かに、それが聴き覚えのある声である。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
伯父は一喝の下にしりぞけた。彼は歯のない口を異様に尖らし、額に青筋を立てて恐ろしい眼で私をじろりと睨んだ。私は予期して居たことであつたけれど、意外にすさまじい伯父の権幕に悸然ぎよつとした。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
私はその瞬間、全身に冷水を浴びせられたやうに悸然ぎよつとした。暫くたつてから内科の医者が診察に来た。そして胸部を特に念入にた後で何にも言はずに出て行つた。やがて藤本さんが戻つて来て
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)