怡々いそ/\)” の例文
其麽時は、孝子は用もない帳簿などをいぢくつて、人後ひとあとまでのこつた。月給を貰つた爲めに怡々いそ/\して早く歸るなどと、思はれたくなかつたのだ。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『アラ今日被來いらしつたの。明日かと思つたら。』と、靜子は吉野に會釋して怡々いそ/\下女の後から出て行く。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は手短かに松永の話を聞いた、聲に力は無かつたが、顏ほど陰氣でもなく、却つて怡々いそ/\してゐるやうなところもあつた。病氣の爲に半分生命を喰はれてゐる人とは思はれなかつた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
朝から晩まで、眞に朝から晩まで、子供等を對手に怡々いそ/\として暮らしてゐる。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
靜子の顏は、先刻さつき怡々いそ/\した光が消えて、妙に眞面目に引緊ひきしまつてゐた。妹共はもう五六町も先方さきを歩いてゐる。十間許り前を行く松藏の後姿は、荷が重くて屈んでるから、大きい鞄に足がついた樣だ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)