御兄おあにい)” の例文
「そりゃ起って見なければ、御兄おあにいさんにだって分りっ子ないでしょうけれども、何しろろくな事はないと思っていらっしゃるんでしょう」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誰だと思つて囈言たはごとをつきやがる。かう見えても、この御兄おあにいさんはな、日本中を股にかけた、ちつとはつらの売れてゐる胡麻の蠅だ。不面目にも程があらあ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
御兄おあにいさんは貴夫あなたのために心配していらっしゃるんですよ。ああいう人と交際つきあいだして、またどんな面倒が起らないとも限らないからって」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「みんなで交際つきあっちゃいけないって忠告でもなさるんじゃなくって。御兄おあにいさんもいらっしゃると書いてあるでしょう、其所そこに」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「で御兄おあにいさんに、御目にかかっていろいろ今までの御無沙汰ごぶさた御詫おわびやら、何やらして、それから一部始終いちぶしじゅうの御話をしたんです」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「でもそれじゃ、うちの方が困りますわ。この間御兄おあにいさんに判を押して借りて頂いた御金ももう期限が切れるんですから」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御兄おあにいさんの所から御使です」と細君が封書を出す。道也は坐ったまま、たいをそらして受け取った。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)