影画かげえ)” の例文
電車をこっちからかして見ると、乗客がまるで障子しょうじに映る影画かげえのように、はっきり一人ひとり一人見分けられるんです。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時もそれが遠くから、だんだんこちらへ近づいて来ると、出窓に面した廊下には、四十格好がっこうの女中が一人、紅茶の道具を運びながら、影画かげえのように通りかかった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
次男に生れて新家しんやを立てたが、若いうちに妻に死なれたので幼ない児供こどもを残して国を飛出した。性来すこぶる器用人で、影画かげえの紙人形を切るのを売物として、はさみ一挺いっちょうで日本中を廻国した変り者だった。
まだ十五丁かと、振り向いているうちに、馬子の姿は影画かげえのように雨につつまれて、またふうと消えた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)