当地こちら)” の例文
旧字:當地
今度、当地こちらへ来がけに、歯がいたんで、馴染なじみ歯科医はいしゃへ行ったとお思い。その築地は、というと、用たしで、歯科医は大廻りに赤坂なんだよ。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、わしは所長ですよ、阿母さん、当地こちらの裁判所の……。」
まだその騒ぎの無い内、当地こちらで、本郷のね、春木町の裏長屋を借りて、夥間なかまと自炊をしたことがありましたっけが、その時も前の年火事があったといって、何年にもない、大変な蚊でしたよ。
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もっとも、当地こちらへ着きますと、ぐ翌日、さいわい、誂えたような好天気で、歩行あるくのに、ぼっと汗ばみますくらい、雛が巣に返りました、お鳥居さきから、帽も外套も脱いでお参りをしたのです。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
当地こちらで黒百合のあるのはどこだとか言ったっけな。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「今度、当地こちらへ来ます時に、然うです。興津おきつ……東海道の興津に、夏場遊んでる友だちが居て、其処へ一日寄ったもんです。夜汽車が涼しいから、十一時過ぎでした、あの駅から上りに乗ったんですよ、右の船頭が。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)