弾機ぜんまい)” の例文
旧字:彈機
あたかも細かつ強靭なる時計の弾機ぜんまいに触れしが如し。卓を隔てて予と相対す。氏は鼠色の大掛児タアクワルを着たり。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と云うと、一刎ひとはね刎ねたままで、弾機ぜんまいが切れたようにそこに突立つったっていた身構みがまえが崩れて、境は草の上へ投膝なげひざで腰を落して、雲が日和下駄ひよりげた穿いた大山伏を、足の爪尖つまさきから見上げて黙る。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その真正面に、もう一冊の活動写真雑誌をひろげて篤介が制服でいた。午後二時の海辺の部屋の明るさ——外国雑誌の大きいページをひるがえす音と、弾機ぜんまいのジジジジほぐれる音が折々するだけであった。
明るい海浜 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)