弄物おもちゃ)” の例文
「へーえ、役者になりたい。」いぶかもなく蘿月は七ツ八ツの頃によく三味線を弄物おもちゃにした長吉の生立おいたちを回想した。「当人がたってと望むなら仕方のない話だが……困ったものだ。」
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この子供は、不断は何のこともない大人の弄物おもちゃであったが、どうかして意地をやかせると、ふすまにへばりついていて、一時間の余も片意地らしい声を立てて、心から泣きつづけることがあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)