廃頽期はいたいき)” の例文
かくの如く文化年代の浮世絵に至つてすこぶる顕著となりし極端なる写実の傾向は、爛熟し尽せる江戸文明の漸く廃頽期はいたいきに向はんとする前兆を示すものならずや。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
連句はその末流の廃頽期はいたいきに当たって当時のプチブルジョア的有閑階級の玩弄物がんろうぶつとなったために、そういうものとしてしか現代人の目には映らないことになった。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
老中筆頭は田沼主殿頭たぬまとのものかみ、横暴をきわめたものであった。時世は全く廃頽期はいたいきに属し、下剋上の悪風潮が、あらゆる階級を毒していた。賄賂請託わいろせいたくが横行し、物価が非常に高かった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
文芸廃頽期はいたいきの詩人もまた、(と言っても、いずれの時か廃頽期でなかろう)
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
大阪の天王寺てんのうじの五重塔が倒れたのであるが、あれは文化文政頃の廃頽期はいたいきに造られたもので正当な建築法に拠らない、肝心な箇所に誤魔化ごまかしのあるものであったと云われている。
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)