廂下ひさしさが)” の例文
風が、どっと吹いて、蓮根市の土間は廂下ひさしさがりに五月闇さつきやみのように暗くなった。一雨来よう。組合わせた五百羅漢の腕が動いて、二人を抱込かかえこみそうである。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山の陰気な影をうけて、すごいような色の白いのが、黒の中折帽を廂下ひさしさがりに、洋杖ステッキも持たず腕を組んだ、背広でオオバアコオトというのが、色がまた妙に白茶けて、うそ寂しい。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)