平紐ひらひも)” の例文
しかしいかにしたらいいか。司教の飾具なんか一つもない。村のみすぼらしい聖房と平紐ひらひもで飾られたダマ織りの古いすりきれた二三の法衣とが、使用し得らるるすべてであった。
……もうあと十分だぞ、やって来るかなあ、と、彼は考えながら無意識に胸元むねもとに眼をやった。絹大島きぬおおしま羽織はおりけた茶の平紐ひらひもの右の附け根に結びつけた赤いリボンが花のように見えた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)